BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。 大規模なシステム障害、セキュリティインシデントなどが起こった場合も同様です。
中国国内においても緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことがきでなければ、特に中小企業は、経営基盤の脆弱なため、廃業に追い込まれるおそれがあります。また、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられます
このような緊急事態が起こった際に事業への損害を最小限にとどめるよう、企業の中核となる事業を継続もしくは早期復旧させるための方法や体制などを取り決めたマニュアル(=BCP)を策定したり、緊急時を想定した訓練をしたりすることをBCP対策といいます。
BCP対策と防災対策の違いはなんなのか?
BCP対策に似た言葉として、防災対策という言葉があります。両者には重複する部分も大いにありますが、いくつかの違いもあります。
まず、一般的な防災対策は、人命や建物、機材などの資産を守ることに重点を置いたものです。対してBCPは、災害における初動対応こそ従業員や顧客の生命の保護が最優先ではあるものの、基本的には主に事業継続に重きを置いています。
そのため、BCP対策は有事の被害を軽減するための対策だけでなく、特に重要な事業を選定する、サプライチェーン観点の対策をするなどの、従来の防災対策とは異なる視点での対策が必要となります。
緊急事態に対して備えておくことが、企業外へのイメージアップにつながることもBCP対策を進める理由の一つです。近年ではBCP対策を行っていることが、ビジネスパートナーとしての条件の一つとなっています。
BCP対策を行って取引先からの信頼を勝ち取らなければ、失注する可能性があると言い換えることもできます。
災害などの影響は自社の被災など直接的なものだけではありません。仕入れ先の企業の事業が止まることで、自社の事業がストップしてしまうケースも考えられます。そのため、発注先・仕入れ先が安定して経営できるか、不測の事態に対応できるかという観点での評価も必要になっています。
実際にBCPを策定する際は、最低限以下のプロセスはおさえておきましょう。
1. 優先的に復旧する事業・業務を決定する
2. 事業停止につながるリスクの分析
3. BCPの策定
BCP対策では、自社の中で特に重要とされる事業、速やかに復旧すべき事業を決めます。合わせて、事業を停止につながるリスクを網羅的に想定していきます。
優先事業とリスクを明確にしたうえで、事業の復旧にかかる時間の目安や、必要なリソース、リソースが不足した場合の代替案なども決めます。
復旧のための「素材」を集めたら、次は「具体的に何をするか」を決めていきます。緊急用の代替施設の準備や拠点の分散化など、具体的な戦略を定めていきましょう。
戦略が決まったら、BCPの発動基準や体制を明確にした上で、実際に文書に落とし込んでいきます。
優先的に復旧する事業・業務を決定する
複数の事業を展開している場合、有事の際にどの事業を優先して復旧させるかを決めていきます。優先事業を決定したら、事業に必要な資源や事業を復旧させるまでの時間を特定していきます。
この一連の流れを事業影響度分析(BIA)といいます。いかにBIAの工程をまとめていきますので確認しながら進めていきましょう。
優先事業を決める
優先すべき事業は、その事業を停止することで会社が受ける影響度から決定していきます。主観的な判断にならないよう、複数の観点から影響度を見ていくことが大切です。
影響度を測る一例としては以下のようなものが挙げられます。
・売上高(売上率)、利益高(利益率)
・シェアへの影響
・顧客の数
・資金繰りへの影響
これらの要素を数値化して一覧表などに落とし込んで比較しましょう。
事業に必要な資源を調べる
優先事業を特定したら、事業を復旧させるために必要な資源(人員・資金・情報など)を調べていきましょう。事業を行う上で特に重要な業務を整理するために行います。
まずは事業継続に必要な業務を上げ、それぞれの業務を進める上でどんな資源が必要になるのかをまとめていきます。
そのうえで、資源の有無がどの程度業務に影響を与えているのかをまとめてください。その資源がなくなると業務が立ち行かなくなるのか、代替可能かなどの基準で影響度を網羅していきます。
業務への影響度が特に大きな資源は事業継続におけるボトルネックになる可能性が高いことを認識しておきましょう。
復旧までの目標時間(RTO)と目標レベル(RLO)を決める
優先事業をどれぐらいの時間・レベルで復旧すべきかを決めていきます。これを目標復旧時間(RTO)・目標復旧レベル(RLO)といいます。
まず操業軸・時間軸で分けて、経営的に損失を許容できるラインを決めましょう。そのうえで、許容ラインを超えないためにはいつまでに復旧しなければならないか、どの程度のクオリティを維持しなければならないかを決めていきます。
目標時間などは早ければ早いほど良いのですが、資源の再調達に時間もコストもかかることを忘れないようにしてください。資源の状況を加味して、達成が目指せる妥当な設定をしましょう。
事業停止につながるリスクの分析
優先事業を決めていくのと並行して、事業停止につながるリスクの洗い出しとそれぞれの分析を行っていきましょう。
リスクの洗い出し
優先事業の決定と並行して、事業を中断させるリスク、緊急事態の種類を洗い出していきます。緊急事態は自然災害だけではないので、あらかじめ想定できるリスクを網羅しましょう。
リスクの種類 具体例
自然災害:地震、台風、集中豪雨、新型インフルエンザなどの感染症によるパンデミック
事故:火災、停電、通信障害、漏水
事件:恐喝、営業妨害、インサイダー取引、贈収賄、ハッキングによる被害
人的エラー:受発注ミス、機器の操作ミス、データの紛失、個人情報の漏洩
労務上の諸問題:セクハラ、パワハラ、過労、メンタルヘルス、人権侵害
リスクの種類は非常に多いですが、この段階では思いつくものを細かく洗い出していきましょう。
BCPの策定
戦略まで固まったら、実際にBCPの策定に入ります。
この段階では以下の2つを決めていきます。
・BCPの発動基準
・発動時の体制
2つを決めたら、実際に文書化していきましょう。
BCP発動の基準を明確にする
どのタイミングでBCPを発動させるかをあらかじめ決めておきましょう。発動基準を明確に定めておかないと、BCPが発動しているかわからず、各従業員がどのように対応すべきか混乱する恐れがあります。
BCPの発動は、優先事業のボトルネックとなる資源を基準に考えます。
被災によって事業を遂行するために必要な資源にどの程度の被害が表れるのか、その資源を再調達・代替するにはどの程度時間がかかるかなどから、発動基準を決めていきましょう。
BCP発動時の体制
緊急事態時に効率よく事業を復旧させるためには、BCP発動時の社内体制も明確にしましょう。
実際の緊急事態時に行う作業は多岐にわたります。復旧対策チームはもちろん、資金調達を含めた財務管理チーム、取引先や協力会社との連携を行うチーム、その他支援を行うチームなどが必要です。
実際にBCPを発動する際は経営者の指揮のもと、それぞれのチームがうまく機能していかなければなりません。チームリーダー、メンバーをあらかじめ決めておきましょう。もちろん事前にどのような対応をすべきか、チームごとに決めておくことも重要です。
次回BCP策定後の従業員教育及びEZ-NETがおすすめするBCPの戦略・代替に活用できるツールを紹介致します。
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